明治大学交響楽団 第98回定期演奏会 鑑賞報告

明治大学交響楽団 第98回定期演奏会 鑑賞報告

昨年暮れに開催された明治大学交響楽団の第98回定期演奏会に参加いたしました。立春を過ぎてもなお演奏会を思い出し暖かい気分に浸っております。

例年通りのクリスマスイブ、すみだトリフォニー大ホール、さらに今回はオール・チャイコフスキーという積極的なプログラムが発表されました。コロナ対策で席はひとつおきでしたが無事完売。待ちに待った機会がやっときた喜びにみんなが溢れていることを感じたものです。

荘厳なパイプオルガンが正面にあるすみだトリフォニーホール
オール・チャイコフスキー・プログラム

二階席からも観客が見守る中の開演。最初の曲は“スラブ行進曲”。
オスマントルコ軍に傷めつけられたスラブ民族を追悼する重苦しい曲で、暗雲立ちこめるトーンで始まります。悲しげな弦楽器に続き、金管楽器の響きが哀愁の緊迫感を高めます。しかし、旋律は徐々に軽快さを増し弾むようなリズムとなりクライマックスには皇帝を称えるロシア国家が演奏されます。
演目をみたとき、なぜイブにこの楽曲を選んだのだろう、とも思いましたが、こんなメッセージを感じました。世界は重苦しい雰囲気が残っているけれど、若さ溢れる演奏でみんなの元気が増えていってほしい、と。この想いはきっとみなさまにも届いたはずです。1曲目から大きな拍手が鳴りやまず、新たな幕開けへの願いが観客席と共鳴していたようです。

2曲目は、3大バレエ音楽のひとつ“眠れる森の美女”。有名な花飾りのワルツは、ディズニー映画ではオーロラ姫が王子と歌う愛の歌のもとになった楽曲です。甘く美しい旋律が会場全体に染みわたります。終始、団員の笑顔を引き出そうとするマエストロ(指揮者)の後ろ姿にとても癒されました。

そして“交響曲第5番”。クラリネットがひっそりと奏でる「運命のモチーフ」が再び雰囲気を重くします。聴きながら、この数年のことを考えました。あったはずの貴重な機会が諍えない力で失われてしまった。人はどんな風に失ったものを取り戻すのだろう?そしてその後にはどんな力強い景色が見えるのだろう?
楽曲中、表現を変えて何度も何度も登場する運命のモチーフ。時に儚げに、時に優美に、そして最後には威風堂々と運命に打ち勝ったかのようにフィナーレ。

演奏会に行くとよく思うのですが、音楽との出会いも一期一会。音は一瞬で消えるかもしれないけれど、そのとき感じた思いはいつまでも残ります。年が明け厳しい寒さを経て、梅ほころぶいまなお心温まる素敵なプレゼントです。きっとこんな思いを抱くひとを増やすためのクリスマスイブコンサートなのでしょう。
言い忘れましたが、アンコールもチャイコフスキーのくるみ割り人形、正真正銘のオール・チャイコでした。

中央右より指揮 和田一樹様 第98代幹事長 伊藤美月様(経営学部3年)と撮影

6月の演奏会も先日発表されました。
日時 2022年6月18日(土)昼公演
場所 荒川区民会館 サンパール荒川 大ホール

指揮 阿部未来

曲目
◆交響詩「フィンランディア」/シベリウス
◆幻想序曲「ロミオとジュリエット」/チャイコフスキー
◆交響曲第一番/ブラームス

どんな演奏と出会えるのか楽しみです。